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私とあなたとあなた

  • 執筆者の写真: 浅葱涼藍
    浅葱涼藍
  • 2023年4月18日
  • 読了時間: 2分

登場人物

相田凛:故人。享年三十五。優也の妻

相田優也:三十五歳。病で妻を亡くす。

高木篤史:三十五歳。独身。二人の友人



凛独白


 死んだらどこにいくんだろうって思ってた。結局それはよくわからなくて、ただ、生きている人々を見ることができた。自分に関係のある人ほど見やすくて、多分だけどお盆に帰りやすい。

 私が少ししか生きられないことを知って、結婚して見送ってくれた優也は今、我が家に3人目の住人を迎える作業を終えた。引っ越してきたのは、篤史さん。彼にもとてもお世話になった。優也の泣きつく先はいつも篤史さんだけど、私の惚気相手も篤史さんだ。夫婦二人でお世話になりっぱなし。……篤史さんの複雑な感情を察していたのに、ごめんなさいね。

引っ越し作業を終えてすぐ、篤史さんは私に挨拶してくれた。こちらこそ、優也をよろしくお願いします。聞こえないってわかっていても、言わずにはいられない。篤史さんは私を立ててくれるから、嫉妬なんてできないのよね。

 少し休憩しろよって優也が声をかけて、二人でソファに座る。篤史さんは私が座っていた席に座るように勧められて、一瞬考えてから座った。もう、遠慮なんてしなくていいのに。優也のことを任せられるのはあなただけなんだから、その席はもうあなたのものよ!

優也は私が死んでから、痩せたしちゃんと寝てないし、酷い状態だった。でも今は少しでも三食食べるようになった。引越しのことを考えてるおかげで、ずっと意気消沈しているなんてことも減ってきた。今日からはちゃんと寝ろって言ってくれる人もいるし、大丈夫でしょう。……というか、なんでベッドも持ってきたのかしら。二人で寝ればいいのに。

 今日はとても良い天気だ。私が優也を残してしまってから1年、金木犀の香りに包まれて、二人の新生活が始まる。

二人とも、幸せになってね。私は大満足の人生を貰ったから。

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